《Light and Darkness 細川俊夫サクソフォン作品集》
大石将紀の3作目になるアルバムは細川俊夫のサクソフォン作品集。
最強の共演者と共に5作品を収録。
現代音楽を代表するレーベル、オーストリア、カイロスレーベルより2024年4月リリース。
《収録曲》
独奏ソプラノサクソフォンのため「3つエッセイ」(2016/2019)
笙とサクソフォン(ソプラノとテナー)のための「明暗」(2020/21)
ソプラノとアルト・サクソフォンのための「3つの愛のうた」(2006)
ソプラノ・サクソフォンとハープのための「弧のうた」(1999/2015)
テナー・サクソフォン、ピアノ、打楽器のための「ヴァーティカル・タイム・スタディ」 II (1993/94)
《演奏者》
大石将紀(サクソフォン)
宮田まゆみ(笙)
吉野直子(ハープ)
イルゼ・エーレンス(ソプラノ)
大宅さおり(ピアノ)
葛西友子(打楽器)
サクソフォンによる沈黙へのカリグラフィー
細川俊夫
大石将紀は、私が最も信頼し、尊敬する音楽家である。
完璧なテクニックを持ち、驚くほど豊かな音楽性に恵まれたこの音楽家は、フランスの古典音楽から現代の最先端の音楽に至るまで、スコアを知的に精密に読み取り、どんな微妙なニュアンスも逃すことなく、その音楽の本質を捉え、繊細に優雅に、そして力強く演奏していく。
サクソフォンという楽器は、大石将紀の存在によって新しい「いのち」を与えられている。
私の音楽は、音による沈黙という画布へのカリグラフィー(書)である。
音の形(旋律のライン)は東洋の毛筆で描いたような曲線を持つ。
そのアイディアは、日本の古代の音楽、特に仏教の声明や雅楽からヒントを得た。
また東洋の書では、描かれた線ばかりではなく、その線の背景にある白い余白にも深い意味を持たせている。
書家は、線を描くときに、同時にその背景の余白の存在を考えている。
私の音楽の線(ライン・旋律)は、沈黙の画布から生まれ、再び沈黙へ帰っていく。
音だけではなく、音が生まれる場所、消えていく場所をも同時に聴いていただきたい。